左下のグラフはプログラムの実施前と後で変化する気持ちを点数化して比較したものです。
「今の気分はどれですか?」に対する回答を、
- 良い……………5点
- やや良い………4点
- ふつう…………3点
- やや悪い………2点
- 悪い……………1点
に置き換え総点数としました。
主観評価は本人の回答、客観評価は評価者の判断です。
アクティビティケアとは、施設などで行われる生き生きとした生活を取り戻すためのレクリエーションなどを 活用したケアのことです。
私たちは、先行研究で実証されたフラワーアレンジメント活用の効用をふまえ、平成30年3月に東京都内の高齢者施設で延べ33名のご高齢者のご協力によりレクリエーション効果を 図るため計6回のフラワーアレンジメントを使ったプログラムの臨床実証を行い、アンケート等により感想 などをお聞きしました。
6回の実証のうち、自分でハサミを使い花をカットする回とあらかじめカットされた花を使う回の印象を比較しました。楽しさの度合いに変化がみられます。
印をつけた補助機能付き
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左下のグラフはプログラムの実施前と後で変化する気持ちを点数化して比較したものです。
「今の気分はどれですか?」に対する回答を、
に置き換え総点数としました。
主観評価は本人の回答、客観評価は評価者の判断です。
認知リハビリテーションに参加した重度認知症のSさんは、アクティビティケアプログラムの中で「頭はボーしているけどお花を見るとパーといきいきするの。これがあるからできる。」とコメントし、作品作りを楽しんでいました。
アクティビティケアはグループ活動によるレクリエーションとして運営するものであり、参加者の達成感、自己効力感を重視します。
ひとつの作品を作り上げた際の満足感は達成感につながり、達成感を繰り返すことで自己効力感「自分はできる」という気持ちを生む本質です。アクティビティケアでは、この心理的機序により、気持ちのプラス変化をもたらすことを効果としてめざします。この効果を最大化するために、本事業の臨床実証により教具・教材・教示法等の検証を行いました。
今回の臨床実証では、
2パターンの教示の検証を行ったが、②の教示においてハサミとスケールシートを教具として使用した。
ハサミは一般的にフラワーデザイン用として流通しているものを使用した。刃物の使用に対し事故を懸念されることもあるが、ハサミを使用する作業は極めて日常生活に密着したものであり、認知症高齢者にとって障害となる要素は少ない。ただし、手指が不可動ケースでは介助が必要である。使用するハサミは切れ味が劣ったものは以下の理由で使用は避けるようにする。
なお、桜等の枝もののカットは作業負荷が高いので、あらかじめスタッフがカットして提供する。
シート 花をカットする長さを示したプリントを各参加者のテーブル上に設置する。スケールは、花材を模した実寸大のイラスト等で表示し、長さを示す単位(cm)を添える。 スケールのイラストはアレンジメントの形状に応じ、主要花材2種類程度の表示がわかりやすい。また、スケールは横方向に置くことが作業しやすい。
《参加者のコメントの例》
十分に吸水した専用の吸水スポンジを器にセットしたものをフラワーベースとして使用する。フラワーベースはフラワーアレンジメントの形状に応じて、花材を挿す位置に色付きの印をつける補助機能を有する。 今回の臨床実証では、ラウンド型2タイプ、ガーデン型1タイプを検証した。
ラウンド型は、決まった花を決まった場所に挿す定型的作業によるアレンジメントで「見本と同じ形にできること」を目標に教示するが、ガーデン型は制作の裁量度合いが高く創造性を発揮することができる教材である。印の位置は作品の構造上重要な意味を持つものであり、ラウンド型は作品のサイズに応じ固定される。ガーデン型は、作品のデザインスタイルに応じて、印の位置、数が変動する。
生花は色彩や香りなどの感覚刺激により心身が賦活することや、ストレス軽減などの効用は既に周知のとおりであるが、花の付き方(咲き方)による作業の難易度変化が顕著に観察された。
また、花材の品質や組み合わせの意匠性やセンスの良し悪しは、プログラムの満足度に大きな影響を及ぼすものであることも改めて確認できた。また、花の形状や組み合わせは課題難易度にも大きく影響することがわかった。
アクティビティケアでは、制作の満足度、達成感を求めるが、それらはあくまでも参加者の作業能力と課題の難易度のバランスの中で生じる。つまり花材の種類が増えれば作業は複雑化し、少なければ簡素化する。能力に対し課題難易度が大きく上回った場合、作業者は「難しくて自分にはできない」と感じ不安やストレスの要因となる。逆に課題難易度が能力を大きく下回った場合、「簡単でつまらない」と感じ、退屈感ひいては「バカにされている」という悪感情を誘発しかねない。
この点を考慮し、花材の組み合わせ方はプログラムの課題の難易度に直結することを念頭に花材を構成することが重要である。
アクティビティケアプログラムを導入する上での教示法を解説いたします。
参加者の容態にもよるが、アクティビティケアのプログラムとして適正に運営する上で、以下の観点で1グループの適正人数を調整する必要がある。
1グループあたりの人数が多くなれば、参加者どうしのコミュニケーションは粗となり、逆に少ない場合は密となる。今回の臨床実証では、会場スペースの観点で1グループあたりの人数を原則6名(回によっては5名)としたが、参加者どうしのコミュニケーションという観点においても、運営ロットとして適正であったと判断する。
参加者の人数がさらに増加する場合は、参加者を2つのグループに分ける等の対応が望まれる。
今回の臨床実証は、教示スタッフ2名(正副各1名ずつ)で行ったが、参加者とのコミュニケーション効果ならびに教示の効率の視点で1グループあたり運営体制としては、ほぼ適正であったと判断する。
参加者が増えてグループを分割する場合は、そのグループに応じ場合教示スタッフの人数は増やす必要がある。
なお、参加者総数が増えなくても認知症等の容体が重い(介助負荷が高い)参加者の比率が高い場合も、教示スタッフの増員は必要となる。
プログラムは以下のア)~ㇰ)の進行が適する。所要時間は各項目で概ね3~5分程度を目安とし、プログラム開始から参加者の退去まで、最長でも1時間以内で完了するよう進行させる。
今回の臨床実証では、教示スタッフは6名1グループの参加者に対し正(以下ヘッドと称す)、副(以下アシスタントと称す)各1名を配したが、ヘッドならびにアシスタントは以下のような役割分担により 運営を行った。
今回のプログラムは、ラウンド型2タイプ、ガーデン型1タイプそれぞれハサミを使用した回と使用しない回にわけて検証した。ハサミ使用の効果は前述したように、作業としての満足度と達成感を得る上で有効であると判断するが、事前に身体状況を判断して決めるべきである。
ここでは、作品の形状に応じた教示法の特徴を述べる。
ラウンド型はドーム状のフラワーアレンジメントである。実用場面としては、食卓の中央等におき四方から観賞するため「四方見」と称し、どの角度から見ても均一なドーム型に仕上げるのが特徴である。
プログラム構築は、上記のように作品の形状によって大きく異なる作業特性や評価基準を、目的に応じて使い分け(組み合わせる)、それぞれの教示法が異なります。 導入時、参加者の能力が十分に把握できていない段階では、ラウンド型を使い教具、教材に慣れさせるとともに、対象者の能力を観察しその後のプログラム構築の判断材料とすることを推奨いたします。
国産花きイノベーション推進事業のリーフレット
平成29年度、国産花きイノベーション推進事業のリーフレットは、下記のボタンをクリックし、
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花を利用した認知リハビリテーションSFAプログラムの手引き
花を利用した認知リハビリテーションSFAプログラムの手引きは、インターネットマガジンでご覧いただけます。Flash版とHTML5版をご用意しております。内容は同じです。ご利用の端末にて最適にご覧になれる方をご利用ください。
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アクティビティケアに向けたフラワーアレンジメントプログラム
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