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29年度国産花きイノベーション推進事業

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花のチカラ、緑のチカラ

文献調査

【文献調査の目的】
植物による生理的、心理的効用や園芸療法等の植物を活用したセラピーについては平成27年度の文献調査において、「ストレス軽減」「緊張緩和」「社会性の向上」「認知機能の向上」等の効果が確認された研究成果を報告しているが、今年度は臨床実証による調査との相乗性を強調したいと考え、「フラワーアレンジメント活動の認知症高齢者に対する有用性」についてアプローチを試みた。  

【文献調査の方法】
(1)文献データベース(検索エンジン)
文献検索のデータベースは 医学中央雑誌(医中誌)を活用した。
(2)調査方法
認知症と花きの活用を直接的に相関させた文献は極めて稀(総説1例)であったが、フラワーアレンジメントは作業療法の手段として活用されるケースが多いところから「作業療法」と「認知症」をキーワードベースとする論文の以下①、②の2軸(以下)で調査を進めた。
①認知症を対象とする作業療法の介入がもたらす効果
②生花、フラワーアレンジメント活動が精神状態やQOLに及ぼす影響

【文献検出の結果】
これまでの認知症を対象とした上記の臨床研究の文献から介入方法のアウトカム(評価)を分類すると以下の4つのカテゴリーが抽出された。
a.認知機能:記憶、視空間認知など
b.精神状態:抑うつ状態、不安焦燥感、やる気のなさなど
c.QOL:生活の質や生活への満足度など
d.社会的交流:他との関わりやコミュニケーションなど

【結果と考察の要旨】
①フラワーアレンジメントの視覚的効果
フラワーアレンジメントについては、生け花作品の写真の観賞が不安と呼吸反応に及ぼす視覚による効果について検討した研究事例があった。健常な女性被験者9名(21~45歳)を対象とし、椅子に座り、生け花作品実物Aの写真とこれを悪い方向へ修正した(作品を崩した)写真変造Bを観賞させ、その美的感覚を視覚的アナログ尺度(VAS)で評価した。その結果、気持ちに不安要素の大きい人は美しい作品(A)を観賞するとリラックスすることが示唆された。
②フラワーアレンジメント活動によるストレス緩和の効果
フラワーアレンジメント活動に参加した地域在住の中高年成人の唾液中のコルチゾールを測定したところ、活動の前後でその値が30%近く下がることが確認された。これは緊張が緩和しストレス軽減効果が生まれたことを意味しており、参加者へのアンケート調査では「喜ばしい」「自信が持てる」「誇りに思う」などの気持ちの項目でプラスの変化があったことがわかり、アレンジメント活動による気持ちがポジティブに変容することが示唆された。
③いけ花の体験・鑑賞が心身に及ぼす影響 (浜名湖花博における公開実験)
浜名湖花博会場において公開実験を行い、いけ花の体験および観賞による心身の変化を指尖容積脈波(注3)とアンケートを用いて評価し、推定血管年齢、波高、脈拍を計算した。血管年齢はいけ花の体験やその観賞により有意に減少した。10項目のアンケートの主成分分析を行った。 癒され感の高値グループは、低いグループに比べいけ花の観賞による血管年齢の低下が顕著だった。浜名湖花博会場内の国際花の交流館に出展したMOA美術文化財団静岡支部のブースにおいて実施された、いけ花(一輪挿し)体験コーナーにおいて公開実験を行った。 会場では、花をいけたり、鑑賞したりすることが人の心身に影響を与えていることを、体験をもって実感することで、ライフスタイルの中に花を取り入れることの素晴らしさを来場者に伝えることが出来、大きな反響があったとされている。
④認知症を対象とするいけばな療法報告
認知症を対象とした研究はいけばな療法に関する総説、抄録等が4報検索された。これらは臨床的な研究というより施設での方法論を中心とした実践報告が多いものの、観察から「精神状態」や「社会的交流」への影響が示唆されていた。 その中で、いけばなが療法的効果を生み出すために以下の4条件が重要であるとされている。
・自分の能力に対して、適切な難易度のものに取組める。
・自分の思い通りに安心して、いけばなができると参加者が感じられる。
・自分のいけた花を自分自身が客観的に評価する機会が与えられている。
・いけばな療法に取り組むことに集中できる環境が与えられている。
 
このような条件がそろうことで、いけばなに取り組む個性が尊重され、作品も参加者もその場に役割を持って存在できるようになる。 このことは、自分自身の能力を最大限に発揮し、満足感、達成感が得られる「フロー体験(至高体験)」(注1)が起きる環境条件と一致するとされ、さらにこのフロー体験を繰り返すことで、自分の能力がより複雑なものに取り組む力へと向上していき、成長となり長期的な幸福に結びつく、とされている。 認知症高齢者を対象とするいけばな療法においては、対象者のレベルに応じて、一人ひとりの状態を理解し、レベルを落とすことなく、その人に残された力を引き出せるように勧めることが肝心である、とされており、当事業で検証を進めたアクティビティケアプログラムの機序とまさに合致する。

以上の文献調査により、花き(切り花)を用いた研究や諸活動を通じ、花としての素材そのものの効用(生理的、心理的)に加え、観賞用作品として造形されたアレンジメントや花をいける行為は、人の精神状態を改善し、QOL(生活の質や生活への満足度など)を高め、社会的交流(他との関わりやコミュニケーションなど)を促進する効果があることがわかった。
加えて、その効用を活用する上で、対象者に応じた寄り添いや配慮など、対象者にかかわる周囲の人々が役割を認識し、行動できることが普及に向けた重要な課題であると思料する。

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